十年後の私が、今より美しいと思える理由
十年後を想像して、少しだけ怖くなった夜
ふと、十年後の自分を想像した。
今より、確実に年を取っている。肌はもっと変わって、白髪も増えているかもしれない。世間の物差しで測れば、「若さ」の項目は、今よりさらに減点される。想像すると、少し胸が重くなった。年を重ねることは、美しさを失っていくことなんだろうか。だとしたら、これから先の人生は、ずっと下り坂ということになる。
でも、その重さの中で、ひとつ引っかかることがあった。あなたが「美しいな」と思ってきた年上の人たち——あの人たちは、下り坂の途中には、見えなかった。
二つの曲線が、逆方向に進む
美しさには、二つの成分がある。このシリーズで見てきた通りだ。
ひとつは、外見の完成度。若さ、ハリ、なめらかさ。これは、正直に言えば、時間とともに下がっていく曲線を描く。抗っても、緩やかに下る。これは事実だ。
もうひとつは、纏う空気。自分への態度、機嫌の安定、佇まいの落ち着き、自分の物差しを持っていること。こちらは、時間とともに——上がっていく。自分との関係は、生きるほど深まる。何にときめくかを知り、機嫌のとり方を覚え、他人の物差しを手放していく。外見の完成度が下る一方で、纏う空気は育つ。 二つの曲線は、逆方向に進む。
若い頃は、完成度の曲線が高いから、それだけで美しく見える。でも年を重ねると、育った空気の曲線が、完成度の下降を追い越していく。あなたが年上の人に感じた美しさは、この追い越しが起きた人たちのものだった。
完成度では説明できなかった、あの人たち
思い出してほしい。あなたが「素敵だな」と思った年上の女性は、たいてい、若作りをしている人ではなかった。
無理に若く見せようとするのではなく、年相応の顔で、でも佇まいに余裕があって、自分の好きなものを知っていて、機嫌がよかった。完成度の物差しでは、若い人に負けているはずなのに、なぜか彼女のほうが美しく見えた。それは、育った空気の曲線が、完成度の曲線を、とっくに追い越していたからだ。
逆に、若さにしがみついて、完成度の曲線だけを必死に守ろうとしている人は、どこか苦しそうに見える。下る曲線を止めようとする戦いは、終わらないからだ。空気の曲線を育てることを忘れて、完成度だけを守ろうとすると、年を重ねるほど、消耗が増えていく。
十年後が、楽しみになる理由
だから、十年後のあなたは、今より美しい可能性が、十分にある。
条件はひとつ。完成度の曲線を守る戦いに人生を使うのではなく、纏う空気の曲線を育てることに、時間を使うこと。自分への態度を、この十年でさらにやわらかくする。何にときめくかを、もっと深く知る。機嫌のとり方を、もっと上手になる。そうすれば、十年後のあなたは、今より深い空気を纏っている。若さは減っても、美しさは増えている。
これは、慰めではなく、構造の話だ。時間はあなたの味方にも敵にもなる。完成度の物差しで生きれば、時間は敵だ。空気の物差しで生きれば、時間は味方になる。どちらの物差しを持つかで、これから先の十年が、下り坂にも、上り坂にもなる。
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育てる側に、賭ける
外見の完成度は下る。でも纏う空気は育つ。どちらを軸に生きるかで、十年後が下り坂にも上り坂にもなる。
十年後の自分に、何を残しておきたいか。少しだけ考えてみてほしい。若さは、残せない。でも、自分との深い関係は、今日から少しずつ積み立てられる。
今日、自分を大切に扱ったその一回は、十年後のあなたの空気の、ほんの一滴になる。育てる側に賭けた人の十年後は、きっと、今より美しい。
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