職場の飲み会で本音を言えたことがない
飲み会の帰り道、ふと思う。
今日も、当たり障りのないことしか言わなかった。笑うべきタイミングで笑った。相槌を打つべきところで打った。「楽しかったです」と言って別れた。
嘘はついていない。でも本音も言っていない。
家に帰ってお茶を飲みながら、「あのとき本当はこう思ってたんだけどな」と、誰にも言わないまま思う。
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「場を乱さない私」を演じるコスト
職場の飲み会では、多くの人が多かれ少なかれキャラクターを演じている。
「明るく楽しい部下」
「話の聞ける同僚」
「波風を立てない存在」
——その場に必要とされていると感じる役割に、自分をはめていく。
それは社会性として必要な部分もある。職場の関係には、ある程度の演技が含まれていることは、不自然じゃない。
でもその演技に、コストがかかっていることは確かだ。
本当のことを言わない。
感じていることを出さない。
場の空気を読んで、それに合わせた自分を出し続ける。
その作業は、エネルギーを使う。
飲み会の後に妙に疲れているのは、お酒のせいだけじゃない。
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本音を言えない理由
職場で本音を言えない理由は、「職場だから」だけじゃない。
もう少し内側に入ると、こういうことが起きている。「私の本音を出すことで、何かが壊れるかもしれない」という恐れがある。
嫌われるかもしれない。
空気を読めない人だと思われるかもしれない。
関係が変わってしまうかもしれない。
その恐れが、本音を引っ込めさせる。
でもその恐れの根っこには、「私の本音は、受け入れられないかもしれない」という自己評価がある。私が本当のことを言うと、迷惑になる。私が感じていることは、場にそぐわない——そういう予測が、発言の前に走る。
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全部言わなくていい
職場の飲み会で、全部の本音を言う必要はない。
「場を乱さない私」を完全に脱ぎ捨てることが目標じゃない。職場という場所には、ある程度の距離感は必要だし、言わなくていいことは言わなくていい。
ただ、一つだけ聞いてほしい。
今夜、一つでも「これは本当にそう思ってる」ということを言えたか。笑いの中に、少しでも自分の感覚が入っていたか。
全部の本音じゃなくていい。でも「一つも自分が入っていない」という夜が続くとき、何かが少しずつ削れていく。
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小さな本音を、一つ出す
次の飲み会で、小さな本音を一つ出してみてほしい。
「私はこっちの料理の方が好きです」
「実はそのドラマ見てます」
「それ、ちょっとわかる気がします」
——場を乱さない範囲でいい。評価が変わるような発言じゃなくていい。
ただ、「私はこう思う」が一つ入っている言葉を、一回出す。
その一回が、「私の感覚を出してもいい」という経験として残る。
演じることをやめることより、演じの中に「私」を一つ混ぜることの方が、ずっとやりやすい。
帰り道に「本当はこう思ってたんだけど」と思ったなら、次はそれを一つだけ、その場で言ってみてほしい。