パーソナルカラー診断が教えてくれなかったこと
診断を受けてから、買い物が怖くなった
友達に勧められて、パーソナルカラー診断を受けた。結果が出て、似合う色の一覧をもらって、帰り道は少し無敵な気分だった。もう服選びで迷わない、と。
三ヶ月後。あなたは店で、一枚のニットを手に持って固まっている。色は、診断結果の「苦手ゾーン」に入っている。でも、ひと目見て「いいな」と思ってしまった。手に取ったまま、頭の中で声がする。
「これは似合わない色」「やめておいたほうがいい」「でも好き」「でも不正解」。
迷わなくなるはずだった買い物が、前より息苦しくなっていた。診断の前は、好きかどうかだけで選べていたのに。
診断は道具で、正解表ではない
最初に言っておくと、パーソナルカラー診断そのものは、よくできた道具だ。顔色が明るく見える色の傾向を知っておくのは役に立つし、迷ったときの参考になる。診断を受けたこと自体は、まったく間違いではない。
問題は、道具がいつのまにか正解表に変わるときに起きる。
「ブルベ冬に似合う色」が「ブルベ冬が着ていい色」に変わり、さらに「それ以外は間違い」に変わる。この変換は静かに起きる。誰に命令されたわけでもないのに、気づけば店の中で答え合わせをしている。診断は色の情報をくれただけなのに、あなたのほうが、それを採点者の席に座らせてしまった。
「似合う」は情報、「好き」は感覚
二つの言葉を、いったん分解しておきたい。
「似合う」は情報だ。肌の色味と服の色味の相性という、外から観察できるデータ。他人が判定できるし、診断士が言語化できる。
便利だが、あなたの内側とは関係なく存在している。
「好き」は感覚だ。その色を見たときに胸が動くかどうか。外からは観察できず、誰にも代行できない。
データではなく、あなたの身体の反応そのものだ。
この二つは、種類の違うものだ。だから本来、競合しない。「似合うけど好きじゃない色」も「似合わないけど好きな色」も、矛盾なく存在できる。息苦しさが生まれるのは、情報を感覚の上位に置いたときだけだ。「似合う=正解、好き=わがまま」という序列を作った瞬間、あなたは自分の感覚を二軍に落としたことになる。
そして感覚を二軍に落とし続けると、何が起きるか。「好き」のセンサーが、だんだん鈍っていく。何を見ても「で、これは正解なの?」としか考えられなくなる。診断が教えてくれなかったのは、ここだ。情報は、感覚の代わりにはなれない。
苦手ゾーンの色に、ときめいてしまったら
では、あのニットはどうすればよかったのか。
試着すればいい。着て、鏡の前に立つ。そして顔色のデータではなく、胸の動きを確認する。「いいな」が鳴っているか。鳴っているなら、それはあなたの色だ。診断結果が何と言おうと、鏡の前のときめきのほうが、あなたの人生に対しては正確なデータだ。
顔色が少しくすんで見える? なら、リップを濃くすればいい。アクセサリーで調整すればいい。情報は、そういうときにこそ道具として使えばいい。好きを諦めるためではなく、好きを成立させるために使う。それが道具の正しい持ち方だと思う。
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判定者を、席に戻す
診断は参考にしていい。でも最終判定の席には、あなたのときめきを座らせておくこと。情報はその隣で、助言だけしていればいい。
今度、買い物で「好きだけど、似合わないって言われた色だ」と固まったら、ひとつだけやってみてほしい。
試着室に持っていく。それだけだ。買わなくていい。鏡の前で、データではなく胸の音を一回聞く。
その一回が、二軍に落としていた感覚を、少しずつ一軍に戻していく。
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