「私、いい感じ」と一人で言えた朝のこと
ある朝、鏡の前で、ふと、つぶやいた。
「私、いい感じ」。
口に出すつもりはなかった。整えた髪、好きな色のリップ、お気に入りの服。鏡の中の自分を見ていたら、自然に、そんな言葉が出ていた。
誰も聞いていない。一人暮らしの部屋で、鏡の中の自分にだけ言った。
少し前なら、絶対に言えなかった。「私、いい感じ」なんて、自惚れているみたいで、恥ずかしい。「私なんて、たいしたことない」と打ち消すのが、いつもの癖だった。
それなのに、その朝は、自然に「いい感じ」が出た。
そして、その日一日、なんだか少し背筋が伸びていた。誰にも言われていない、自分が自分に言っただけの一言。それが、こんなにも自分を支えてくれるなんて、思わなかった。
「私なんて」が、毎朝あなたを削っている
朝、鏡を見たときに、あなたは自分に何と声をかけているだろうか。
意識していないかもしれないが、ほとんどの人は、何かしらの言葉を、心の中で自分に向けている。
「またクマができてる」「肌が荒れてる」「太った気がする」「疲れた顔してる」。
これらは、頭の中の声だ。声に出していなくても、確かに自分に届いている。そして、毎朝、これを浴び続けると、自分への評価は、確実に下がっていく。
「私なんて」「やっぱりダメだ」「全然きれいじゃない」。
これらの言葉を、毎日自分にかけ続ければ、自分が自分のことを、本当にそういう存在だと思い込んでいく。鏡を見るたびに、自己評価が削られていく。
これは、誰に何を言われたわけでもない。あなた自身が、毎朝、自分にいちばんひどい言葉を浴びせている。世界でいちばん近い人——自分自身——から、毎日、否定の言葉を受け取っている。それで、機嫌よく一日を過ごせるはずがない。
朝の鏡の前は、思っているより、一日の機嫌を決める大事な時間だ。
自分への声かけは、自分への態度の表れ
「私、いい感じ」と言えたあの朝、何が変わったのだろうか。
特別なことは、何もしていない。化粧の出来栄えが、特別良かったわけでもない。ただ、いつもの自分に、いつもと違う言葉をかけた。それだけ。
でも、その言葉一つで、自分への態度が変わる。自分を否定する言葉を浴びせる人と、自分を認める言葉をかけてくれる人。あなた自身が、その両方になれる。どちらを選ぶかは、あなた次第だ。
そして、自分を認める言葉は、最初は不自然に感じる。「私、いい感じ」なんて、白々しい気がする。自惚れているように感じる。「本当はそんなことないのに」という反論が、心の中で湧く。
でも、それは慣れの問題だ。長いこと「私なんて」を浴び続けてきたから、「いい感じ」が違和感に感じるだけ。本来、自分を認める言葉のほうが、自分への自然な態度のはずだ。
そして、ここで大事なのは、「いい感じ」は完璧という意味じゃない、ということ。「悪くないな」「今日は機嫌よく出かけられそうだな」くらいの、ハードルの低い肯定でいい。100点を取る必要はない。65点くらいで、十分「いい感じ」と言える。
そういう、ゆるい自己肯定を、毎朝自分にあげる。その積み重ねが、自分への態度を、少しずつ変えていく。
✦ ✦ ✦
明日の朝、鏡の前で、自分に向けて、心の中でつぶやいてみる。
完璧じゃなくていい。整っていなくていい。
「悪くないな」「今日もまあ、いい感じ」
最初は、ぎこちなく感じるかもしれない。違和感があるかもしれない。それでいい。新しい習慣は、最初はいつもぎこちない。
そして、自分にその言葉をかけた瞬間の、自分の表情を、鏡で確認してみる。ほんの少し、口角が上がっていたり、目元が柔らかくなっていたりするはずだ。
その瞬間、あなたは、自分への態度を、ほんの少し変えている。
「私なんて」を浴びせ続ける自分から、「悪くないな」を言ってあげる自分へ。鏡の中の自分に対して、いちばん優しい人に、あなた自身がなる。
その小さな声かけが、毎朝積み重なって、いつのまにか、あなたの一日の機嫌を変えていく。
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