可愛いパジャマを、誰に見せるでもなく着た夜
パジャマは、ずっと「適当」だった。
寝るときに着るのは、よれたTシャツとスウェットのズボン。何年も前に部屋着用にしたもので、毛玉ができて、ヨレている。「寝るだけだし」「誰も見ないし」と、買い替えもせずに着続けていた。
ある日、デパートでジェラートピケのコーナーの前を通りかかった。ふわふわで、可愛い色のパジャマたち。値段を見て、一瞬「高いな」と思った。寝るときに着るだけのものに、この値段。
でも、その質感を触ってみて、心が動いた。「これに包まれて寝たら、どんな気持ちだろう」。
買って、家でその夜、初めて着た。
肌触りが、信じられないくらい気持ちいい。
鏡で見た自分は、ちょっと可愛かった。
誰にも見せないのに、なんだか、自分にときめいていた。
「寝るだけだから」の中にある自己評価
パジャマを「適当」で済ませてきたのは、なぜだろうか。
「寝るだけだから」
「誰も見ないから」
「服じゃないから」。
でも、よく考えてみてほしい。一日のうち、どれくらいの時間、パジャマを着ているだろうか。
夜、家に帰ってから、お風呂に入って、寝るまで。そして、朝起きてから、着替えるまで。一日の3分の1近くは、パジャマを着ている。それなのに、その3分の1の時間に、いちばん雑なものを着ている。
これは、奇妙なことだ。外に出ている時間は、それなりに気を使う。仕事用の服、デート用の服、休日のお出かけ服。でも、家にいる時間、いちばん長くリラックスする時間に、いちばんよれた服を着ている。
なぜか。それは、「家にいる自分には、価値を置かなくていい」と、無意識に思っているからだ。
外向きの自分には、ちゃんとした服を。でも、家の中の自分は、見られないから、誰の評価も得られないから、適当でいい。あなたの一日の主役は、外向きの自分であって、家の中の自分ではない。
でも、家の中の自分も、あなただ。むしろ、いちばんリラックスして、いちばん長く一緒にいる、本当のあなただ。その自分を雑に扱い続けることは、自分の中の「本当の自分」を粗末に扱っているのと、同じことだ。
誰も見ない時間こそ、自分にときめいていい
ジェラートピケを着た夜、何が変わったか。
肌触りが気持ちいいのは、もちろんある。でも、いちばんの変化は、鏡を見たとき、自分にときめいたことだ。
誰にも見せない。誰にも褒められない。それなのに、ふわふわのパジャマを着た自分が、ちょっと可愛い。一人の夜、そのことに気づいた瞬間、なんだか少し、自分が好きになった。
これは、SNSにアップするためでもない、誰かに見せるためでもない、完全に自分だけのための「ときめき」だ。
このときめきが、いちばん純度が高い。誰かに見せて褒められたい気持ちが混ざっていない。他人の評価を気にしていない。ただ、自分が、自分を見て、いい気分になっている。それだけ。
そして、こういう「自分だけのときめき」を持っている人は、強い。なぜなら、誰からも評価されない時間にも、自分で自分を満たせるから。一人の夜が、寂しい時間じゃなく、自分を甘やかす時間に変わる。
外向きの自分を整えるのは、簡単だ。誰かに見られるから、頑張れる。でも、誰にも見られない自分を整えるのは、本当の意味で自分を大切にできる人にしかできない。家での自分にこそ、ちゃんと手をかける。それが、自分との関係を、いちばん深いところで整えていく。
✦ ✦ ✦
クローゼットの中の、よれたパジャマや部屋着を、一度見直してみる。
何年も着続けているもの。毛玉ができたもの。「寝るだけだから」と諦めてきたもの。
それらを、いっぺんに変えなくていい。
ただ一着だけ、「これを着ている自分が、ちょっと可愛いな」と思えるパジャマを、選んでみる。
ジェラートピケでもいい。
お気に入りのブランドでもいい。
素材が気持ちいいものでもいい。
誰にも見せないからこそ、純粋に「自分が着たいか」だけで選ぶ。
そして、それを着た夜、ふと鏡を見て、自分にちょっとときめいてみる。
誰にも気づかれない。誰にも褒められない。でも、あなたは知っている。今夜の自分は、誰にも見せない時間にも、自分を可愛がっている。
その小さなときめきが、一人の夜を、特別なものに変えていく。
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